住まいと健康

Health

食生活や運動だけではない!?  暖かい住まいはコレステロール値の抑制にもつながる 

生活習慣病の代表的な疾患の一つ循環器疾患。 
厚生労働省による国民の健康増進の総合的推進に向けた基本方針「健康日本21(第2次)」(2013年度~2023年度)では、その危険因子として高血圧などともに脂質異常症が挙げられました。 
昨年5月末に公表された第3次の健康日本21(2024年4月から適用)でも、引き続き循環器疾患対策の一つとして「脂質高値の減少」を目指すことが明記されています。 

脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態のこと。 
私たちが日頃から接する機会の多い言葉でもある「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」や「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」などの血中濃度の異常を指し、動脈硬化をはじめさまざまな疾患の原因になると言われています。 

コレステロール値の乱れについては、これまで、食生活や喫煙、運動不足など生活習慣の面からその原因が指摘され、対策が講じられてきました。 
しかし、これらに加えて、室温の在り方も関係しているとの新たな知見が明らかにされました。 
血中脂質と室温がどのように関係しているのか、詳しく見ていきましょう。 

 寒い家は循環器疾患リスクを高める 

血中脂質と室温の関連について発表されたのは、前回記事(2023年11月6日掲載)でも紹介した「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第7回報告会 ~国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業に基づく『生活環境病』予防の医学的エビデンス」(一般社団法人 日本サステナブル建築協会の主催により2023年2月開催)です。

断熱改修等による居住者の健康への影響調査の概要

この報告会では、断熱改修の前後の調査とその後の追跡調査に基づき、生活習慣病として広く認識されてきた高血圧や循環器疾患が、住宅の断熱性能の不足や不適切な暖房の使用を要因とする「生活環境病」でもあることが指摘されました。

血中脂質と室温の関連についての報告は、「改修前後調査」の結果を踏まえて行われました。

報告では、WHO(世界保健機関)が「住まいと健康に関するガイドライン」で強く勧告した「室温18℃以上」の住宅と寒冷(12℃未満)、準寒冷(12~18℃)の住宅におけるコレステロール値を比較しています。
これによると、総コレステロール(基準値:220mg/dl未満。血液中に含まれる全てのコレステロールを測定した総量)、LDLコレステロール(基準値:140mg/dl未満。いわゆる悪玉コレステロール)、Non-HDLコレステロール(基準値:170mg/dl未満。LDLとは別の悪玉を含めた全ての悪玉コレステロールの量を表す)のいずれにおいても、寒冷と準寒冷の住宅では基準値を上回る人が18℃以上の住宅より有意に多いとの結果が示されました。

総コレステロール、LDLコレステロール、Non-HDLコレステロールは、それぞれ基準値を上回ることで動脈硬化や脂質代謝異常といった疾患が疑われるとされています。
今回の報告は、温熱環境を室温18℃以上に保つことでこれらのコレステロール値の抑制を図ることができ、循環器疾患のリスク回避にもつながることを示していると言えます。

住まいの温熱環境を改善して健康で快適な暮らしを

コレステロールを巡っては、これまで生活習慣に着目した原因と対策が広く社会で認識されてきました。
例えば、主な要因として挙げられるのは食生活や喫煙、運動不足、対策としては青魚や植物性脂質のバランスの取れた摂取による食生活の改善、禁煙、運動不足の解消といったものです。

これらに加えて、新たに室温の在り方が血液中の脂質異常(基準値を上回るコレステロール値)にも関連していることが明らかにされたわけです。

コレステロールは人間の体に存在する脂質の一つで、細胞膜や各種のホルモン、胆汁酸を作る材料となり、私たちの身体を維持するために必要なものです。
しかし、その数値が過剰になったり不足したりする状態になると、動脈硬化をはじめ循環器疾患につながるリスク要因になってしまうため、バランスの取れた数値の維持に気を配る必要があります。

生活習慣の改善はもちろん、室温18℃以上を意識した断熱性能の向上や適切な暖房の在り方を図り、住まいの温熱環境を改善して健康リスクを回避し、快適でいきいきとした暮らしを実現したいですね。