前回の記事では、北洲の住まいの温熱環境調査の結果、高断熱住宅は概ね快適な温熱環境を実現できていること、とりわけ全館空調システムを採用し、冷暖房設備の連続運転を行なった場合にはさらに温度が安定することについて、データをもとに紹介した。
では実際の住まい手の快適性はどうなのか、その評価を施主であるK様に聞いた。
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『基本性能』を重視した家選びと、家族で住みながらつくる『快適性』
― K様邸は延床面積が約54坪、二世帯住宅として建てられたそうですが、家づくりで重視したのはどんなことですか?
K様(ご主人):断熱性・気密性を含めた基本性能と全館空調は絶対条件でした。それと、安全性と耐火性はもとより、メンテナンスのしやすい外装材、この3つです。
それ以外のこと、間取りや仕様なんかは、すべて妻と息子夫婦に任せましたね(笑)。
― 1年間、リビング、脱衣室、寝室の3か所で温熱環境測定を行わせていただきましたが、驚くほど温度が安定していました。
K様:基本性能がしっかりしているから、全館空調で家中が均一な温度になるのだと思います。ただ、住みながら工夫した点はいくつかあります。
例えば、我が家の場合、南西に位置する子世帯のリビングダイニングは、デザインの都合で軒の出が無いため、どうしても夏場に西日が入ると、少しだけ温度が上がってしまいます。そこで、リビングの入口側から室内へ、対角線上に扇風機で風を送ってみたところ、対流が起きてリビング全体がとても快適になりました。
このように、家族みんなで少しずつ工夫を重ねて、住みながらさらに快適な家にしていきました。
― 住んでからの調整でさらに快適になったのですね!夏は西日対策とのことですが、冬場はいかがですか?
K様:冬場は、天気予報で明朝の気温が低いことが分かると、就寝前に設定温度を少し上げました。そのおかげもあってか、北側の私の寝室に設置した温度計では、データからもわかるとおり21度以上をキープしていて、とても快適でした。
私の場合は、以前の家がとても寒くて、結露もひどかった。とにかく暖かい家は絶対条件でした。全館空調は全部屋を暖めるので、光熱費は少し高くなりますが、妻は風邪をひくぐらいなら光熱費がかかってもいいと言います。私もその意見に賛成で、風邪をひいて寝込むよりも、元気に光熱費分を働いて稼いだほうがいい(笑)。新居に引っ越して5年になりますが、引っ越してから実はまだ一度も風邪をひいていないんです!
熱効率と快適性、コストのバランスに配慮した住まいづくりを
家自体の基本性能がいちばん重要なことは言うまでもない。断熱はあとから容易に追加できないし、長く暮らす場所だからこそ、数十年先まで見据えてつくる必要がある。
そのうえで、家中の温度ムラをなくすためには、冷暖房設備の連続運転が欠かせない。ダイキン工業の調査によると、エアコン稼働の時間帯によっては連続運転のほうが、間欠運転よりも消費電力が少なくて済むというデータもある。
(https://www.daikin.co.jp/air/life/issue/mission05/)
前回、建築的手法と機械的手法の組み合わせが重要であることを述べたが、K様のお話からわかるように、これらの手法に加えて「住まい方の工夫」が合わさることによって、快適性は向上する。
熱効率と快適性、ランニングコストのバランスに配慮した家づくりが重要である。決して簡単なことではないが、北洲はそのベストバランスをこれからも追求し、健康的な暮らしのために提案していきたい。