住まいと健康

Health

子どもの疾病に住まい環境が影響を!?

「住まいと健康」に関する研究が、さらなる飛躍を遂げようとしている。
これまで行われてきたいくつかの研究を“統合”して分析することで、より有意義な結果を得ようとする試みが進んでいる。
今回はその中でも、子どもの疾病と住まい環境に関する研究成果を紹介したい。

住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 ~第5回報告会~(日本サステナブル建築協会)で報告された『他調査との統合分析の施行』における「子どもの疾病・諸症状」。
慶應義塾大学の伊香賀研究室が中心となって分析したものだ。

 

子どもの疾病に室内環境が影響を及ぼす可能性

分析対象として「2014~2018年度の国土交通省スマートウェルネス住宅等推進調査事業」の調査における子どものデータと、「2015年、2017年、2018年における平成11年基準適合住宅調査等」における子どものデータを使用し、いずれも12歳未満のデータに絞って分析をした結果が報告されている。※有効サンプル686名(405世帯)。

「喘息」・「中耳炎」・「アレルギー性鼻炎」・「アトピー性皮膚炎」
この4つの疾病について、室内環境の違いによってどのような差が生まれるのかを調べている。
まずは686名について、その症状の有無を明らかにするところから。

 

 

例えば、アレルギー性鼻炎や中耳炎という診断を受けた子どもは、4人に1人の割合でいることがわかる。

 

ここからが本題である。

これらの疾病について「診断を受けたことがない」子どもたちを[0]群、それ以外の「診断を受けたことがあるが特に治療していない」「症状が悪い時のみ受診・治療している」「定期的に受診・治療している」子ども達を[1]群とし、それぞれの疾病ごとに室内環境による影響を分析している。

※分析に使用されている指標(イメージ)

 

 

◆居間の床近傍室温の「喘息」症状との関わり

最初に、「喘息」についての分析結果を見ていこう。

居間床近傍室温が中央値(ここでは16.1℃ )以上の子どもは、中央値未満の子どもと比べて、喘息である可能性が0.5倍となっている。つまり半分という結果だ。
足元が暖かい住まいでは、喘息症状が発生するリスクを低減できる可能性が示された。

 

◆適正湿度の「中耳炎」症状との関わり

次に、比較的大人よりもかかりやすいといわれる「中耳炎」についての分析結果を。

居間湿度が40%未満の子どもは、40%以上60%未満の子どもと比べて中耳炎である可能性が1.5倍高いことがわかった。
室内を乾燥させずに適正湿度を保つことで、「中耳炎」のリスクを低減できる可能性が示されている。

 

◆適正湿度の「アレルギー性鼻炎」症状との関わり

花粉やハウスダストなど様々な要因で症状が現れる「アレルギー性鼻炎」と室内環境との関連性はどのようになっているだろう。

 

居間床上1m室温が18℃未満の群について、湿度と症状の有無を分析したところ、居間湿度が40%未満の子どもは40%以上60%未満の子どもと比べて、アレルギー性鼻炎である可能性が2.5倍高い傾向がある。
これもかなりインパクトのある数値ではないだろうか。

 

◆適正湿度の「アトピー性皮膚炎」症状との関わり

最後に、アトピー性皮膚炎に関する分析結果が下記のとおり。

居間床上1m室温が18℃未満の群について、湿度と症状の有無を分析したところ、居間湿度が60%以上の子どもは、40%以上60%未満の子どもと比べて、アトピー性皮膚炎である可能性が1.9倍の傾向。
この結果を見ても、低すぎず高すぎない「適正な湿度環境」が重要であることがわかる。

 

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詳細な数値データはここでは紹介せず、大きな結論だけを紹介した格好になったが、
いずれも室内環境が子どもの疾病に少なからぬ影響があることを示す結果になっている。

「18℃ 以上の暖かさ」「40~60%と言われる適正湿度」を保てる室内環境をこれまで以上に重視し、住む人自身も学びながら住まいづくりを行っていくことが大切なのではないだろうか。
特に今回発表された研究成果から、室温ほど明確に体感しにくい “湿度” への意識を高めていく必要性が感じられた。

今後の更なる“統合分析”の可能性に期待したい。

 

※資料出典/住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 ~第5回報告会~(日本サステナブル建築協会)より