暖かい室温が健康に及ぼす様々な影響は、少しずつではあるが一般にも広く知られつつある。
多くの研究者たちの根気強い研究とその発信の賜物だろう。
今回はそんな中でも、多くの人に比較的身近に感じられる「健康診断数値」と「室温」との関係に着目した研究成果を紹介したい。
血圧だけではない、室温環境が及ぼす影響
多くの方が最低でも年に一回は目にしているであろう健康診断数値。言うまでもなく、病気の早期発見に繋がったり、また、その数値から様々な疾病リスクを知ることができるものだ。
今回紹介する研究では、その健康診断数値の中でも『血中脂質』と『心電図所見』に着目して、室温との関連を検証している。
※日本サステナブル建築協会
『住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査』第4回報告資料より
まずは丁寧に基準値と前提要件が示されている。
【前提要件】
・血中脂質を「動脈硬化の進行度(血管年齢)」と定義し、寒い家と暖かい家の居住者で比較
・心電図所見ありを「循環器疾患ハイリスク者」と定義し、寒い家と暖かい家の居住者で比較
暖かい住宅群と寒い住宅群とで具体的な有意差は見られたのか?
WHOが提唱する18℃ 以上の室内温度。
この18℃ を境とし、一日の中でも居間室温が最も低い時間帯である朝5時の気温が18℃以上の家を「温暖住宅」、18℃ 未満の家を「寒冷住宅」とし、2つの群に分けて比較している。
“血中脂質”での比較結果は以下のとおり。
対象者の総数は違えど、総コレステロール値、LDLコレステロール値ともに、2つの群では明らかな有意差が見て取れる。
さらに、“血中脂質が基準値以上”、“心電図異常”となる「寒冷住宅群」のオッズ比を示したグラフが以下のとおりだ。
図中に示されているとおり、寒冷住宅で総コレステロールが基準値を超えるオッズは2.6倍。
LDLコレステロールが基準値を超えるオッズは1.6倍。そして、心電図の異常所見ありとなるオッズは1.9倍、という結果が出ている。
以上のとおり、寒い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図異常所見がある人が有意に多いことがわかった。
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特別な健康調査を行わずとも、比較的手元で確認しやすいのが健康診断の数値だろう。
コレステロール値、心電図異常所見欄を改めて確認しながら、住まいの室温環境にぜひ思いを巡らせてみて欲しい。
他にも様々な要因があることは言うまでもないが、同じ生活習慣を保ったと仮定した時、暖かい室温環境を実現するだけで、それらの数値が大きく改善し、実際に病気のリスクを減らせるとしたら、それはとても価値のある話ではないだろうか。
これからの研究成果にも大いに期待したい。