前回の記事では、なぜ住まいの断熱化が必要なのか?その目的から改めて確認し、「居住性・快適性の向上」「省エネルギー」「表面結露の防止」という3つの目的を共有した。
では、自分たちが今住む家を暖かく改善したいと考えた時、具体的にどのような点から検討を進めていけば良いのだろうか。
大規模リフォームじゃないと意味がない?
家中どこにいても均一に暖かい住まいに改善するとしたら、やはり一階から二階までのすべての断熱改修を行う、いわゆる“フルリノベーション”が必要にる。それでも、建て替えよりは費用が抑えられることと、箇所によっては断熱“補強”で十分な結果が見込める部分もあるため、建て替えよりもフルリノベーションを選択するユーザはこれからも増えていくことだろう。
とはいえ、誰もが簡単に検討できるレベルの費用でないことは事実。家全体の改修以外の選択肢はないのだろうか。
ゾーン断熱という考え方
一般的にリフォーム規模に応じて、「全体改修(フルリノベーション)」、「部分改修」と分類することが多いが、断熱補強の観点においてはその中間である「ゾーン(エリア)改修」という考え方をとることもできる。
改修規模(=費用規模)でいうと、小さい順に、①「部分改修」→②「ゾーン(エリア)改修」→③「全体改修」となる。性能向上のレベルとしては、もちろん逆の順序となる。
①の部分改修とは、「サッシを断熱サッシに交換する」、「サッシに内窓を取り付ける」、「床下部分に断熱を施す」など、短工期で行えるリフォームがそのイメージである。③の全体改修は、骨組みまで解体して全体の断熱・気密をしっかりとやり直すところからリフォームを行うイメージ。
そして、あまり耳慣れないかと思われるのが、②の「ゾーン断熱改修」であろう。前述のとおり、家全体が均一で暖かい室温になるよう改善するためには、大規模なリフォームが必要にはなる。しかし、例えば、「子ども達が巣立った我が家で、2階を使うことはほとんどない」、というような場合、「1階だけで良いから暖かく快適な空間にしたい」というニーズも生まれてくる。そんな時に検討できるのが、「ゾーン断熱」という考え方だ。
ライフスタイルの多様化にも合わせやすい、コスパの良い選択肢といえる。
ゾーンの捉え方が肝!
しかし、ゾーン改修は良いことばかりではない。プランニングが甘いとリスクが大きくなる考え方でもあるのだ。
- 「浴室・洗面室」だけをゾーンとして捉えて施工することは良いプランなのか?
- 「LDK」だけを断熱改修の対象ゾーンにした場合はどうか?
- 廊下までやろうとなった時に、玄関の寒さはどうする?
- 吹き抜けがあった時はどのように考える?
このような検討をすること無しに、単純に施工エリアだけを決めることは危険である。
ゾーンで断熱改修をした場合は、基本的にはそれ以外の場所との断熱性能の差が激しくなる。つまりは、改修前よりもゾーン内外のヒートショックリスクを高めることにもなり得るのである。また、非断熱エリアの表面結露の誘発リスクも高まるだろう。
リスクを考慮した上で、ゾーン断熱のメリットを生かしたプランを練ることが重要なポイントだ。
また、換気計画や暖房計画を抜きにしては考えられない。これらをきちんとプランニングすることが、まさにゾーン断熱改修の肝となる。
身体へ極力負担をかけない暖かな空間を実現するためには、建て替えやフルリノベーションじゃなければ意味がないのでは、と諦める必要は全くない。
今の生活パターンをしっかりと見つめ、ゾーン断熱というアイデアも頭におきながら、実現可能な計画を信頼できるプロと一緒に検討していくことをお勧めしたい。