2018年11月27日にWHO(世界保健機関)が住宅と健康に関するガイドラインを発表した。
住まいの質が健康に大きな影響を与えるということが、いくつかのポイントごとに整理され発信されている。
その中で、健康へのリスクを回避するために「暖かい室内環境」を強く勧告していることに注目したい。
住まいが人々の健康にとってますます重要なものとして捉えられている。
ガイドラインの要旨では、冒頭で「住宅環境の改善は命を救い、病気を減らし、生活の質を高め、
貧困を減らし、気候変動の影響を和らげ、SDGs(*)の達成に貢献する。(以下略)」という内容が語られている。
WHO『HOUSING AND HEALTH GUIDELINES』(2018.11.27)
つまり、健康で、かつ心身ともに豊かな暮らしを送っていくためには、何よりも住まいの質が重要、ということだ。
健康に対する住宅環境の影響がますます世界的な重要課題になっていることを、
非常に強く感じさせる資料である。
寒い家への改善を強く勧告。
そのガイドラインの中でも、「室内の寒さと断熱」というトピックに関しては、
以下のような内容で強く勧告している。
「居住者を健康に対する悪影響から守るためには、家の室内温度は十分に高くあるべきである。
温帯の、もしくは寒い気候の国々に対しては、寒い季節に一般の人々の健康を守るために安全で
バランスのとれた室温として、18℃が提案された」。
つまり、住む人の健康を守るためには、寒い時期でも室内温度は18℃をキープしよう、という明快な指標が世界基準として改めて発信されたと言える。
WHO『HOUSING AND HEALTH GUIDELINES』(2018.11.27)
歴史的な背景をもとに耐震性能についてはトップレベルの住宅が造られてきた日本だが、
断熱性能については二の次にされてきた感がある。
また、病気(特に高血圧)に対する予防の観点でも、住宅についての指針は
まったく語られてこなかったのがこれまでの状況である。
WHOの今回の新しいガイドラインにより、室温と健康の関係について一層注目が集まることが
確実だ。
*SDGs:SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(持続可能な開発目標)
2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。日本も国をあげて取り組みを始めており、近年高い意識を持った企業が積極的に活動を本格化させている。