前回の記事では、「暖かい住まい」は人権であるという考えのもと、「室温規制」が、欧米の先進諸国では常識となりつつあることについて取り上げた。今回は、その「室温規制」の効果が如実に見られるショッキングなデータを紹介したい。
日本は不名誉なヒートショック大国
本サイトでも度々取り上げているが、ヒートショックとは急激な温度変化に身体がついていけず、激しい血管の収縮による血圧の変動が心筋梗塞や脳卒中といった重い健康被害に繋がるもの。
データは、そのヒートショックが主な要因を占めると見られる高齢者の浴室における溺死者数を人口10万人あたりの発生率にして国際比較したものだ。 日本の圧倒的な高さが目立つが、特に低いアメリカやドイツ、イギリスといった国々は「室温規制」先進国として知られている。
わが日本は、イギリスと比べて50倍以上もの危険を有していると言える。
冬場に浴室で溺れて亡くなる高齢者が増加!
ここで、もうひとつ重要なデータを見てほしい。平成30年に発表された、平成19年から28年までの10年間における高齢者の事故の状況について分析したデータだ。
調査の結果、高齢者の死亡原因となった「不慮の事故」の内容について、他の多くの内容が10年間で減少しているのに対し、「不慮の溺水および溺死」がとび抜けて増加しているのだ。
もう一つ、消費者庁が発表した、「救急搬送データ(東京消防庁)」の分析によると、高齢者の「おぼれる」事故については、92.3%(535件中494件)が浴槽内で発生しており、かつ発生時期は11月~3月の冬期が実に全体の約7割を占めている。
日本では、多くの高齢者が寒い冬場に、ヒートショックにより浴槽で溺れて命を落としている現実が見て取れる。そして、国際的に見てもその被害が大きいのだ。
ひとりひとりの自覚が新たな基準をつくる
家全体を均一な暖かさに保つ「室温規制」。わが日本でもいち早い推進が望まれるが、大前提として我々ひとりひとりが健康的な生活の基盤として認識し、自らの家の温度環境を真剣に見つめることが重要ではないだろうか。