これまで、暖かい住まいがどれだけ住む人の健康に良いかという点を様々な先生方の研究結果を元に紹介してきた。
では、今、寒い家に住んでいる人はどうやって家を暖かくすれば良いのか。
「技術編」としてこれから3回にわたって、具体的な考え方や対策のポイントなどを取り上げる。
今回はまず、暖かな家、その基本的な考え方について改めて紹介したい。
暖房の意味とその効果
まずてっとり早く家を暖かくするために頭に浮かぶことは「暖房」かもしれない。
その「暖房」は本来は部屋全体を暖めることを指し、室温と無関係に人を暖める「採暖」とは区別しなければならない。
部屋全体が暖かくないと、こたつに入っていても背中側が低温にさらされていたり、台所に立ったりトイレに立ったりする度に急激な温度変化のショックにより体はストレスを受けることになる。
温度ムラの無い室内環境がいかに体に優しいかは、これまでの記事でも多く紹介してきたので、ここでは割愛したい。
問題なのは、いくら採暖器具を駆使しても、隙間だらけの家では部屋全体を均質に暖めることは難しく、ムラのある室温環境しか作れないということである。
やはり、住まいの断熱化が重要になってくるのだ。
住まいの断熱化のポイント
断熱の目的は大きく3つに分けられる。
1つ目が「居住性・快適性の向上」、2つ目が「省エネルギー」、3つ目が「表面結露(※)の防止」である。この3つが“断熱の効果”と言い換えることもできるだろう。
①から③にいくに従って、断熱材はより厚いものが必要となり、また、しっかりとした施工が求められることになる。
断熱化の目的とすべきは「居住性・快適性の向上」であり、そこに照準を合わせると、「省エネ」だったり「結露防止」などはおまけに付いてくるもの、と言っても良いだろう。
※表面結露/窓ガラスやサッシ、壁などの表面に発生する結露。水蒸気を含んだ暖かい空気が温度の低い建材に触れることでおこる。
高断熱の家と低断熱の家のわかりやすい違いとは
高断熱の家とは、一言で言えばムラのない室温が実現できる家だ。
ムラのない室温は、住む人の「体感温度」に密接に関係している。
下のイラストを見て欲しい。
左が低断熱の家。右が高断熱の家である。
同じ「室温20℃」でも、低断熱の家は外部に接する天井や壁、床の表面温度が低く、「体感温度」に大きな違いが生まれるのだ。
結果、低断熱の家では「採暖」以外の「暖」がとれない、ということになるのだ。
暖房機器に大きな予算をつぎ込む前に、まずは家の断熱化について考えてみることをお勧めしたい。
その際ポイントとなるのは、おまけとして付いてくる「省エネ」のためのリフォームではなく、「健康・快適」を実現するための断熱リフォームを検討することではないだろうか。
※参考資料 / 牧子 芳正 『住宅読本』(2005、北洲総合研究所)