省エネ性能・断熱性能の高い家づくりを促進するための国による新たな支援事業が登場しました。
2023年11月2日に閣議決定された、国土交通省の「子育てエコホーム支援事業」、さらに同省・経済産業省・環境省の3省が連携した住宅の省エネリフォームに関する支援事業です。
国はこれまでも、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、省エネ性能・断熱性能の高い家づくりへの支援策を打ち出してきました。
今回の支援事業は、「住宅省エネ2024キャンペーン」と総称され、2022年12月に始まった2023キャンペーンの新バージョンと言えます。
ただ、支援内容が前回キャンペーンとは異なる事業もあるため、注意が必要です。
ここでは、「住宅省エネ2024キャンペーン」を構成する支援事業について、それぞれの内容や変更・注意点などを確認していきましょう。
子育てエコホーム支援事業①
子育て・若者夫婦世帯の住宅新築に80~100万円を補助
住宅の新築に対する支援としては、「子育てエコホーム支援事業」があります。
前回キャンペーンの「こどもエコ住まい支援事業」の後継となる事業で、子育て世帯・若者夫婦世帯が対象です。
※各世帯について、国は以下のように定義しています。
子育て世帯:18歳未満の子を有する世帯
若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが39歳以下の世帯
■住宅の新築に対する子育てエコホーム支援事業
対象 | 内容 | 一戸あたりの補助額 | 所管 | 公式サイト |
子育て世帯・若者夫婦世帯による住宅の新築・購入 | ➀長期優良住宅 | 100万円 | 国土交通省 | 住宅:子育てエコホーム支援事業について – 国土交通省 (mlit.go.jp) |
②ZEH住宅 | 80万円 |
ここに注意!
新たに長期優良住宅とZEH住宅という2つの区分が設定されました。
補助額がそれぞれ異なるので注意が必要です。
100万円が補助される長期優良住宅は、「将来にわたり長く住み続けられると国から認められた住宅」のこと。
耐震性や省エネルギー性、劣化対策、維持保全計画の策定をはじめ、国が定める「長期優良住宅の認定基準」をクリアしていれば、都道府県や市町村等の所管行政庁で認定が受けられます。
80万円の補助対象となるZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)は、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指した住宅です。
国交省の資料によると、強化外皮基準への適合(高断熱化によりZEH水準を満たす)、太陽光発電などの再生可能エネルギーを除いても一次エネルギー消費量を20%以上削減できる性能が求められています。
いずれの場合も、閣議決定された2023年11月2日以降に、基礎工事より後の工程に着手したものが支援対象となります。
子育てエコホーム支援事業②
省エネ改修を補助、前回キャンペーンからの補助額変更に注意
国交省の「子育てエコホーム支援事業」には、前回キャンペーンと同様、住宅の省エネ改修への支援メニューも用意されています。
■省エネ改修を対象とする子育てエコホーム支援事業
対象工事 | 世帯の属性 | 改修の種類 | 一戸あたりの補助額 | 所管 | 公式サイト |
【必須】省エネ改修(開口部の断熱改修、外壁・屋根・床などの断熱改修、エコ住宅設備の設置のいずれか) 【任意】子育て対応改修、防災性向上改修、バリアフリー改修など | 子育て・若者夫婦世帯 | 既存住宅を購入して改修 | 最大60万円 | 国土交通省 | 子育てエコホーム支援事業 国土交通省 (mlit.go.jp) |
長期優良住宅への改修 | 最大45万円 | ||||
上記以外の改修 | 最大30万円 | ||||
その他の世帯 | 長期優良住宅への改修 | 最大30万円 | |||
上記以外の改修 | 最大20万円 |
※支援対象は閣議決定された2023年11月2日以降に改修工事に着手したもの
ここに注意!
ここでも長期優良住宅へのリフォームや既存住宅の購入を伴う場合など、パターンに応じて上限額が異なります。
また、長期優良住宅の認定を求めない省エネ改修では、補助額が下記のように前回キャンペーンより減ってしまう点にも注意が必要です。
・子育て・若者夫婦世帯 最大45万円→最大30万円
・その他の世帯 最大30万円→最大20万円
高断熱窓への改修や省エネ給湯器の導入を補助
環境省・経済産業省も連携して支援
■高断熱窓への改修や省エネ給湯器導入への支援
名称 | 補助対象 | 補助額 | 所管 | 公式サイト |
先進的窓リノベ事業 | 高断熱性能の窓への改修(内窓設置、外窓交換、ガラス交換) | 最大200万円 ※改修費用の2分の1相当を定額補助 | 環境省 | 先進的窓リノベ2024事業 | 環境省 (env.go.jp) |
給湯省エネ事業 | 高効率給湯器や家庭用燃料電池の導入 | 導入費用を定額補助 ・エコキュート 8~12万円 ・ハイブリッド給湯器 10~15万円 ・家庭用燃料電池(エネファーム) 18~20万円 | 経済産業省 | 給湯省エネ2024事業(METI/経済産業省) |
住宅全体の断熱性能を高める改修が理想的ですが、予算などの面で難しい場合もあるでしょう。
その際、熱損失が最も大きい「窓」の断熱性能を向上させる改修は、住まいの断熱性能を上向かせる大きな一歩になります。
窓は住まいの熱の出入りが最も大きく、冬場は室内の熱の58%が外に逃げてしまいます。
高断熱の窓に改修すれば、室内を暖かく快適に保ち、冷暖房費を抑えることにつながります。
環境省による先進的窓リノベ事業や、先にご紹介した国交省による子育てエコホーム支援事業の省エネ改修に盛り込まれている「開口部の断熱改修」を活用すれば、窓の断熱性能向上を図ることができます。
また、家庭のエネルギー消費量の約3割を占めるとされる給湯器を高効率なものに替えることで、エネルギーコストの上昇に対する有効な対策と位置付けられており、経済産業省による支援事業はこれに対応するものです。
これらの支援事業は、国交省・経産省・環境省の3省連携の取り組みとして、各事業をワンストップで利用できる(併用可能)仕組みとなっています。
国の支援を上手に活用して暖かく快適な住まいを
住宅の省エネ・断熱性能の向上は、世界的な課題である脱炭素化の実現に貢献するだけでなく、私たちが多くの時間を過ごす住まいを暖かく保ち、健康で快適な生活の実現につながります。
また、エネルギーコストの抑制が図れます。
国の支援策を上手に活用して、暖かく健康・快適で、地球にもやさしい住まいを実現したいですね。