世界で猛威をふるっている「新型コロナウィルス」。
日本でもその勢いはとどまることを知らず、感染者の拡がりが続いている。
以前このサイトでインタビュー記事を掲載させて頂いた「星 旦二 先生」に、
公衆衛生学の専門家として、寄稿頂いた。
◆ 星 旦二(ほし・たんじ)先生 略歴
1950年、福島県生まれ。首都大学東京・名誉教授 放送大学客員教授
福島県立医科大学を卒業し、竹田総合病院で臨床研修後に、東京大学で医学博士号を取得。
東京都衛生局、厚生省国立公衆衛生院、厚生省大臣官房医系技官併任、
英国ロンドン大学大学院留学を経て現職。
公衆衛生を主要テーマとして、「健康長寿」に関する研究と主張を続ける。
近著に『新しい保健医療福祉制度論』(日本看護協会・2014年)
はじめに
感染経路が特定できないコロナウイルス感染が広がってきた。
また、我が国でも死者数は2020年4月20日(月)現在で161名になった。
高齢者に多い点も特性である。二次感染の拡大を防ぐために、各地域でのイベント開催が延期され、学校休校が開始された。経済停滞も危惧されている。
ここでは、人が持つ免疫機能を活性化させ、発病しないための栄養摂取の意義とともに、
免疫を活性化する暖かい健康住宅の意義を確認したい。
特に、本質を俯瞰した対策と、本質的な情報提供が求められている。
感染と発病は異なる
私たちが万が一にも、コロナウイルスに感染したとても、発病しない意義が忘れがちである。
人に備わった免疫機能に注目し、発病させないために必要不可欠なことは栄養摂取であるものの、深く眠れる暖かい健康住宅の意義が忘れられていないだろうか。
特に寒く無い住宅では、湿度が保たれやすいことから各種ウイルスの生存時間が急速に低下することにも注目したいものである。
不顕性感染による他者への感染力は極めて低いものと推定されている。
死亡しない重要性
様々なリスク管理では、その発生率と致死率が大切である。
感染症対策も同様に最重要課題は致死率である。
世界的に見て感染ないし発病数が中国に次いで多い我が国ではあったとしても、死亡数そして死亡率は極めて低いことは、市民の民度の高さと医学を含む公衆衛生のレベルの高さを象徴しているとして、誇りに思うべきであろう。
死亡数の視点
コロナウイルス感染で死者数が161名になったことは前述した。
一方、寒い冬のヒートショックにより毎日約150人が死亡し同時に、主として経済的な理由から毎日約50人が自殺している。
また、冬の間は、通常のインフルエンザによる二次感染の肺炎により毎日約70人が死亡している事実が忘れがちである。
様々な疾病対策では、致死率とともに課題の大きさを示す、死亡数が大切である。
社会活動をする限り完全に予防はできない感染数は最重要指標ではない。
人は死ななければ良いという意味で致死率と死亡総数を重視しない予防対策は不安を拡大させるだけで真の公衆衛生対策とは言えない。
リスクがゼロとなる暮らしや生活はあり得ないのだ。
このような、本質的な根本予防つまりゼロ次予防を重視する施策が求められている。
感染症の撲滅には栄養と上下水道の整備
世界的にみて感染症が撲滅されていった経緯をみると、ポリオや天然痘におけるワクチンの劇的効果はむしろ例外であり、致死的感染症の激減理由は、栄養の向上と上下水道の整備であり、ワクチンや抗生物質の役割は極めて小さかった。
特に経済発展による食生活やくらしの豊かさの寄与度が極めて大きいことは歴史が証明している。
人々の暮らしの意義
感染しない人々の行動
感染予防のためには、日々の暮らしの中で、ウイルスを排除することである。
よって、人込みを避けたり、うがいをすることはとても重要なことである。
しかしながら手洗いの有効性が充分に明確に証明されているわけではない。
更に、人間が無菌状態で生きているわけではないことにも注目すべきであり、帯状疱疹などの原因となっているヘルペスウイルスは、発症後には神経に付着する形で温存している事実にも注目しなくてはならない。
このように、動物の細胞には、植物機能であるミトコンドリアが内在したり、口腔内や腸内菌は、数知れない細菌が同居し、免疫機能を発揮していることを忘れてはならない。
また、人間が生存していく上で不可欠である土壌菌の種類を考えれば一目瞭然である。
動植物は特有の細菌やウイルスと共存しているし、終息しない致死的感染症がなかったから地球が存続できるのだ。多様性が大事なのだ。
抗生剤の多用により、細菌の突然変異を促した結末として、薬剤耐性菌で悩まされている専門病院の実態は、殺虫剤などの乱用により生態系を撹乱させていることと同類である。
人間だけが無菌状態で生存できるわけではない。
発病させない対策
万が一感染したとしても、発病しなければありがたい。不顕性感染である。
発病をさせない上で最も大事なことは、免疫であり、それを支える栄養と睡眠と筋肉を含む総合的に見た体力であろう。ウイルスは体内に入らなければ単独では増殖できない。
高齢者に致死率が高いことを見るとうなずける。
ただし、全体での致死率は、中国でも約3%であり、パニックを起こすような疾病ではないと考えている。
毎年冬に流行する通常インフルエンザでも毎年国民の約三割前後が感染し、数年以内にほぼ全国民が感染する。
しかもその殆どは不顕性感染であり免疫を獲得している。
残念ながら持病や低栄養傾向になりがちな虚弱高齢者の場合には、細菌性肺炎を併発し、毎年約一万人が死亡していることが忘れられている。
真の感染症対策の中核である、個々人の素晴らしい免疫機能を最大限に発揮するためには、バランスのある栄養と楽しい食育が最も大事である。
また「笑い」と「手あて」という社会との関係性も忘れてはならない。
血中総コレステロール値が高く、小太りであり、身長が高い方が長寿を保っている科学的事実は、子ども時代を含めて優れた栄養摂取が大切であることを裏付けている。
今後多くの国民が感染するものと推定されるコロナウイルスに対して、ワクチン開発に期待する前に早急に求められる事は、一人一人の免疫機能を今日から発揮させることである。
充分な栄養を摂取し、例え感染しても発病させずに免疫抗体をつくり、決して若死しないことである。体も心も冷やさないヒートショックのない住宅づくりにより、快適な室内温湿度環境を整えて、家族の「てあて」を用いることで発病と死亡数を大幅に予防できる。
温度が適温となり空気が乾燥しない季節になればどのウイルスも猛威を振るうことは決してないのが、自然の摂理である。
ウイルスも生き延びたいのであり、人を全滅させることはない、が、自然の摂理だと願っている。
首都大学東京・名誉教授 医師(公衆衛生学)
星 旦二
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新型コロナウィルスに限らず、
先生は、本質は「根源的な予防(ゼロ次予防)」が大切であることを強調されていた。
これからの「with Corona」の時代を見据え、
暖かい住まいで免疫力をアップさせる重要性を改めて感じさせられた。